2019年3月9日土曜日

アマチュア無線再考

私にとってのアマチュア無線の魅力、そしてまさにこの趣味の存在意義でもあると感じるのは、社会に変革をもたらすようなイノベーションの「プロトタイプを実験できる場」であることだ。この30年間に私自身が関与してきたアマチュア無線の活動を振り返ってみると、以下のようなことにワクワクしていたことに気付く。

(1) 携帯電話がなかった時代に、ハンディトランシーバとレピータを使い、モバイル通話が身近なものになった時、何が私達の生活を変えるのか、身をもって体験。(1980年代前半)
(2) スマホどころか iモードすらなかった時代に、パケット無線による移動体通信の実験を通し、モバイルワイヤレス通信とデジタルネットワークが融合することで、何が私達の生活を変えるのか、身をもって体験。これには当時、NHKの興味を惹き、夜のニュースで取り上げられえたほか、省庁関係の外郭研究団体などから、まとまった額の研究費を、一介のアマチュア無線研究グループが得ることとなった。(1980年代後半)
(3) インターネットが一般に開放される前に、パケット無線でTCP/IP over AX.25技術の開発と、そのユーザーコミュニティ作りに携わり、一般人がインターネットを使えるようになったら、何が起きるのかを身を持って体験。これは当時の通産省からも注目され、学識経験者や業界をリードする研究者の皆さんで構成された勉強会のメンバーとして招聘された。(1990年代前半)
(4) プロの世界でもやっと黎明期にあったVoIP技術とプロトタイプ製品を利用して、地元のレピータの交信をインターネットを介して米国に居住する、そのレピータの管理団体の元メンバーの方に流す実験を実施。当時の法的な制限もあり、あくまでも一方向で垂れ流しただけとしましたが、技術的には双方向も可能なシステムであった。(1990年代中頃)

いま、私の頭の中にあるテーマのひとつは、FT8のような高い符号化利得を持つ電波形式を利活用して、小電力な無線設備でフィールドからIoT的なデータを収集、それをビッグデータ解析するような実験を全国、あるいは全世界規模で行なえたら面白いのではないだろうか、というもの。これからも、そうしたプロトタイプを背負う気概と気合を持ち続けたいと思いつつ、面白いアイディアを持つ若い方の発掘と支援にも取り組みたい。

携帯電話で出来ること、SNSで出来ること、しかもそれらより低性能なもの、それがアマチュア無線です、というのは、もうやめたいと思うのだ。