アマチュア無線連盟に求められる一番大事な役割は、
政策渉外(ガバメントアフェアーズ)にあると思う。
これまで多くのアマチュア無線連盟会員にとって、連盟の存在は会員に対してサービスを提供する存在であったと思う。日本では特に、この考えから今でもまったく脱却できていないように見える。
そうなると、会員に対して提供するサービスの中でも一番わかりやすいものが、QSLビューローだ。特に日本のJARLは、世界各国のアマチュア無線連盟でもなかなか例を見ない、国内同士のQSLカード交換にまでビューローサービスが提供されてきた。そのため、会員にとってはなおさら、このサービスの存在感が強いと言えよう。
しかしながら、世界的な動向を観察してみると、まず国内交信同士のQSLビューローは、いずれの国の連盟にもほぼ存在しないようだ(ドイツと日本くらいでは?オーストリアにもあるらしい?)。QSLビューローというものは、あくまでも国際間のQSLカード交換のために世界の連盟が協調して、これまで行なわれてきたサービスなのだ。しかも、このサービスの維持が、そろそろ限界に来つつあることから、欧州などを中心にQSLビューローの改革や撤退などの議論がスタートしたところである。
特に国際間のQSLカード交換は、OQRS(オンラインQSL請求システム)や、米国ARRLによる電子QSLシステムLoTW、あるいはClub LogによるIOTAアワードのマッチング機能など、ビューローサービスの利用よりも電子的なものへと移行しつつある。
そのため、アマチュア無線連盟の存在意義の大半をQSLビューローサービスが占めていたとすると、もはやその存在意義が足元から揺らいでしまうように思う。
このことにいち早く気付いた先進諸国のアマチュア無線連盟は、次の100年を見据えた価値提供の模索を開始している。それは、若者の育成支援であったり、会員に対して若者のメンターになるための教育であったり、地域に根差したアマチュア無線クラブ等に対して、地域社会にアマチュア無線の存在意義を広めるためには、どのように新聞やローカルテレビ局など地元メディアと接したらよいかなどといったマーケティング的手法の伝授をする研修会を開催するなど、色々とプロフェッショナリティの高い支援を提供し始めている。
すなわち、日本を除く先進諸国のアマチュア無線各連盟では、「アマチュア無線の外の世界」に対してアマチュア無線をアピールし、若者を育成して次の100年のアマチュア無線を活性化させる、という活動を連盟が行なおうという動きが始まっているのである。
日本のアマチュア無線連盟JARLがこのような脱皮を図るためには、会員は今度はサービスを享受する立場から、自分が自らアマチュア無線のために何が出来るのかを自問する立場にならなくてはいけないのだろう。JARLからサービスの提供を受けるために会員になるのではなく、個人個人がアマチュア無線のために活躍するためにJARLに入って活動する、という視点に、JARLや会員自身が脱却できるかどうかに、日本のアマチュア無線の未来がかかっている。